「 墨汁 vs 固形墨  」

書道で使用する「墨」。
これは、いわゆる木や油を燃やして出る煙の成分「煤(すす)」
と動物の皮を煮たときに出る「にかわ」と「香料」
で構成されているのですが、(詳しいことはいずれ)
何千年にも渡り、研究が重ねられ改良が重ねられてきました。
今では、科学の力が加わり、色んな意味で昔の墨とは違うものになってきました。

昔から、「墨の粒子は小さい方が美しい色である」と言われてきました。
硯の選び方、墨のすり方、古墨の素晴らしさを、
過去の書家、研究者たちが訴えてきました。

ここでおもしろい話があります。
仲良くさせていただいている方で
某大手墨液メーカーの社長さんがいるのですが、
墨液の粒子は固形墨より10倍近く粒子が細かいとのことを
教えていただきました。
細かさだけで言うと墨液が勝利となってしまいます。
では一体何をよしと言っているのでしょうか。

墨液会社としても大正時代から、
研究を重ね、日本中に広めました。

墨の粒子のことを勉強していくと、
粒子の世界では、墨だろうが、墨液だろうが
あまり関係ない世界にぶつかります。
墨液は、腐食を防ぐために塩分を入れたりもしますが、
紙の繊維に粒子が水とともに浸透していく意味では同じです。
目に見える色は同じ黒です(完全に同じな黒はないが)
磨りたての墨の感触はなかなか出ませんが、
高級墨液になると、かなり近づきます。

墨液も今ではたくさんの種類が出ています。
固形墨にこだわる人はどうしても墨液を否定しがちですが、
完全否定をせずに、メリットにも目をむけ、
状況に応じて両方を使い分けるのも一つの書の楽しみ方ではないかと思います。

理論だけでなく、実際に色んな墨を使って、
自分の価値基準で判断して、色や感触の違いを体感していくことが重要で、
決して「これでなければならない」という押し付けはよくないと思います。
逆に、色々とやった結果やっぱり固形墨にこだわりたいと思うならばそれでよいと思います。




※メルマガ「簡単おもしろ書の歴史」より抜粋。
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タイトル:【 「書」を書く愉しみ 】 光文社新書より



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