「筆職人との出逢い」。今日は筆について話したいと思います。 先日、9月に私が出版する予定の書の本の取材のため、 江戸筆の4代目、亀井氏を訪れました。 約7時間に渡って、私に熱く筆について語ってくれました。 そのこだわり方が尋常じゃないんです。 今まで何度か、こだわりを持った 文房四宝の職人さんと熱く語ってきましたが、ダントツの頑固ぶりでした。 筆を語る上ではずせないのが、動物の毛。 その動物の毛の選択から妥協は一切なしです。 例えば羊の毛を仕入れるにしても、 その産地の製造方法からどの毛をどのように、処理したのかまで厳選します。 皮ごと毛を仕入れた後は、 煮たり灰でまぶしたりして最低でも5年〜10年ねかせます。 その後約30工程の、職人技を持って一本の筆が仕上がります。 すべての工程において非効率なことを頑(かたく)なに守っています。 氏曰く、「ほとんどの筆が効率化や簡素化され、本物の筆とは出会えなくなっている」 私が長年愛用している筆の中の数本も完全に「偽者」とダメだしをいただきました。 奈良の筆屋さんから直接、値段のいいもの書きぶりがいいものを紹介いただき、 試し書きまでして買ったものが、「偽者」でした。 え?と反論したくも、その場で「ナイロンがこれだけ入ってるよ」 と証拠を見せられました。 その他にも、 ・「純」羊、馬などよりも 多少他の動物の毛を加えた兼毛の方がよい筆 ・兼毛の配分の仕方や、わずか一本の入れ方で筆は変わる。 ・毎日使用する前に、水につけ空気を抜いて 5〜10分、放置した後に書くと、墨のなじみ方がよく、 洗った時に墨が簡単に落ちる ・乾いた筆は、空気にさらしてはいけない。 桐箱に入れるべし ・水には純銀を入れるべし。さすれば筆はいたまない ・筆をおろす時はまず松煙墨を使うべし 油煙墨はダメ。 ・すった墨を保管するなら純銅に入れるべし などなどたくさんの目から鱗話を聞きました。 ちなみに、亀井夫妻は、どんなに忙しくても、 思い立ったら中国の産地までいきなり飛び立つほどの、 仲良し夫婦であり、古典の直筆が出ようものなら、 顕微鏡のようなものを持って10時間近くその作品のある 美術館に出向き、熱中し、店員に怒られるくらい入り浸るそうです。 まず、自分のくせを知ってもらうためにまず1年おつきあいすることになりました。 その後、半紙用、大作用の筆、パフォーマンス舞台用の特殊筆を 亀井氏にオーダメイドで創っていただけることになりました。 ( かなり貯金しなければ^_^; ) ※メルマガ「簡単おもしろ書の歴史」2005年6月号より抜粋。 メルマガのお申込はこちら。
タイトル:【 「書」を書く愉しみ 】 光文社新書より トップに戻る |